Honda 24年ぶりの復活参戦 厳しい現実との戦い

 2012年7月2日。Hondaは2013年1月に行われる世界一過酷なダカールラリーに、24年ぶりにワークスチーム「TEAM HRC」を率いて復帰することを宣言した。かつて2輪部門で5度の優勝を収め、そのうち1986年から1989年まで4連勝を飾ったチームの復帰は話題になった。
 ダカールラリーはこの間大きく変貌した。参加車両は排気量450㏄までの市販車、燃料搭載量が少なく軽量で戦闘力が高く、その分ルートの難易度は上がっていた。必要なナビゲーションアイテムのほか、安全確保に搭載する機材も増え、マシンパッケージの自由度は限られていた。
 またサハラ砂漠から南米大陸へと開催地が移動し、真夏のアタカマ砂漠や、標高5000メートルに迫るアンデス山脈の峠越えなど、ライダー、マシンへの過酷さは増した。マシン作りで欠かせない現地テストは、翌年のラリールート想定区域へのチーム関係者の立ち入りなどが制限され、それを犯せば参加受理がされないルールなども、24年ぶりに参戦する「TEAM HRC」にとって困難な挑戦としていた。

CRF450 RALLY
CRF450 RALLY

 2013年のダカールに初めて投入された”CRF450 RALLY”は、市販エンデューロモデルCRF450Xをベースに開発された。今後、ユーザーに完成車とラリーキットパーツを提供する、という方法を模索したからだ。
 マシンの開発段階ではエースライダーのエルダー・ロドリゲス選手(ポルトガル)から厳しい注文が飛ぶ。もっとスリムに、もっと軽く。想定したタンク容量を削られ、限られたスペースに燃料タンクを押し込んだ。そのため整備性が複雑になりメカニックは手を焼いた。


 国内外でのテストを経て2012年10月、7日間約2000km(リエゾンを含む)で闘うモロッコラリーに「TEAM HRC」は実戦参加をした。ダカールラリーに参加予定のロドリゲス選手、サム・サンダーランド選手(イギリス)、フェリペ・ザノル選手(ブラジル)、ハビエル・ピゾリト選手(アルゼンチン)、ジョニー・キャンベル選手(アメリカ)の5名がそろった。
 ダカールラリーで連勝中のKTMファクトリーチームも参戦をすることから、現状の効果測定としても大切な場でもあった。

エルダー・ロドリゲス選手、ハビエル・ピゾリト選手、ジョニー・キャンベル選手
エルダー・ロドリゲス選手
ハビエル・ピゾリト選手
ジョニー・キャンベル選手

 ラリー序盤、”CRF450 RALLY”とロドリゲス選手は順調な滑り出しをみせたものの、燃料系トラブルがロドリゲス選手のマシンを襲う。最終結果は、サンダーランド選手10位、ザノル選手13位、ピゾリト選手15位、キャンベル選手18位、ロドリゲス選手41位だった。   
 スタッフは必死になってモロッコでのトラブルを改善し、カリフォルニアで行われた最終耐久テストに臨むものの、サンダーランド選手、ザノル選手の2名が負傷し、ダカールラリーの欠場を余儀なくされ、「TEAM HRC」は5名体制から3名体制での参戦という厳しい状況の中で、ダカールラリー本番を迎えることになった。

 

ジョニー・キャンベル選手
ジョニー・キャンベル選手


ハビエル・ピゾリト選手
ハビエル・ピゾリト選手


エルダー・ロドリゲス選手
エルダー・ロドリゲス選手

 2013年1月5日、Hondaにとって24年ぶりの挑戦が始まった。2輪、4輪合計449台がペルーのリマをスタートし、チリのサンティアゴまでの15日間、総走行距離約8420kmでダカールラリーは行われた。
 ダカールは容赦なく「TEAM HRC」に襲いかかる。ラリー2日目、ロドリゲス選手は競技区間が残り4kmの地点でガス欠。想定燃費を上回る厳しいルートが原因だった。サポートライダーのピゾリト選手の到着を待ち復帰するが、タイムロスを喫する。ラリー3日目にもロドリゲス選手、キャンベル選手は燃料系トラブルで貴重な時間を失う。数分、数秒の差が勝負を分けるダカールでは大きな痛手だった。また、8日目のマラソンステージではロドリゲス選手がコースを誤るなど、ライダー、チームの総合力においても経験の浅さは否めなかった。

 ロドリゲス選手は序盤、トラブルにより28位まで後退した総合順位をステージごとに取り戻し、レストデイを挟みステージ10までに1位と34分19秒差、3位とは22分以内の総合6位までばん回していた。残る4ステージでスパートをかけ、表彰台の一角をものにする戦略だった。しかし、終盤11ステージを走行中、立木の枝が”CRF450 RALLY”の電気系配線を切るトラブルが発生。ロドリゲス選手はその原因追及と修復に時間を使い、総合順位が6位から9位に後退。トップとの差も1時間16分24秒と、表彰台獲得の目標は崩れ去った。

 「TEAM HRC」の最終結果は、ロドリゲス選手が総合7位、ピゾリト選手が総合8位、キャンベル選手は41位で復帰初年度のラリーを終えることになった。
 変幻自在に姿を変え、多くの罠を仕掛けるダカールは、些細な詰めの甘さを見逃さない。熟知した経験豊富な王者、KTMファクトリーラリーチームの背中はまだ遠く、「TEAM HRC」にとって、ダカールラリーへの真のスタートラインを見た、復帰初年度の戦いだったのである。

Report & Result - Honda Dakar Rally 2013
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