どのような団体がダカールラリーを主催しているのですか?
アモリー・スポーツ・オーガニゼイション(Amaury Sport Organisation)、通称A.S.O.(エイ・エス・オー)というフランスの団体が主催しています。
ダカールラリーにライダーとして参加する条件を教えて下さい。
基本的には国籍、性別を問わず、年齢が18歳以上であり、FIM(国際モーターサイクリズム連盟)が発給するFIMクロスカントリーラリーライセンスを所持していること、参加車両を運転することができる運転免許証を持っていること、などがあります。
同時にダカールラリーの主催者は、ラリーに参加するに相応しい運転技術や経験値として認められる他のラリー参加歴があるか、健康状態がラリー参加に相応しいかを証明する医療機関の診断書などの提出を求めています。また参加にあたり、ダカールラリーが走行する場所、標高の高い場所を含む特別な状況下で行われるイベントであることを理解していること、などを考慮してエントリーの可否を決めています。
南米大陸で開催されるダカールラリーはいつ始まったの?
2009年の第31回大会から始まり、2018年で10回目です。
世界中から注目を集めるダカールラリーは、テロの脅威にさらされ、2008年はスタート直前で中止という決断が下されました。翌09年、主催者のA.S.O.はダカールラリーの舞台を、サハラ砂漠から南米大陸へと移す決断をします。そのときのコースは、アルゼンチンのブエノスアイレスをスタートし、チリのアタカマ砂漠をめぐり、再びブエノスアイレスへと戻る周回ルートでした。
以降、アルゼンチン、チリ、ペルー、ボリビア、パラグアイなどラリーが通過した国は増え、2018年のダカールラリー2018は、ペルー~ボリビア~アルゼンチンの3カ国を廻るルートで開催されます。
オートバイのカテゴリーやクラス分けはありますか?
エントラントの技量、参加する車両、競技形態によって次のように分かれています。
クロスカントリー競技のために変更された、またはラリー用に装備された車両。公道走行が可能で、生産機種に基づくモデル。エンジン排気量は最大450cc、単気筒または2気筒までのエンジンを搭載しているオートバイ。
クロスカントリー競技のために変更された、または装備された車両。公道走行が可能で、生産機種に基づくモデル。エンジン排気量は最大450cc、単気筒または2気筒までのエンジンを搭載しているオートバイ。
マラソンクラスでは、ダカールラリーの競技期間中、エンジン(エンジンケース、シリンダー、シリンダーヘッドを含む)、フレーム、フロントフォーク、スイングアーム、の交換は認められていない。
ライダーによるクラス
メーカーなどと契約しているプロフェッショナルライダーを中心としたクラス。アマチュアの場合は過去の戦歴によって主催者が選出したライダーにより構成される。エリートライダーのリストは、主催者が制作する。ゼッケンプレートはイエローのベースにゼッケン番号を表示。
エリートライダー以外が属するグループ。ゼッケンプレートはホワイトベースにゼッケンナンバーを入れる。また、車両クラスによりスーパープロダクションクラスはSP、マラソンクラスはMの文字が入る。
ダカールラリーとはどんな競技ですか?
ダカールラリーは、クロスカントリーラリーの中でも開催日程、走行距離において最高峰のイベントです。真夏の南米大陸を舞台に砂漠地帯、アンデス山脈等の高地にルートをとり、ロードブックを頼りに主催者が決めたルートを走破し、ラリー中の競技区間の累積走行時間を競うものです。
ラリーにはオートバイをはじめ、クワッドと呼ばれるバギー、四輪、トラックなど多くのカテゴリーが用意されています。これもこのイベントの伝統です。
ラリーではスタートからゴールまで絶え間なく走り続けるのですか?
毎日ラリーの宿泊地であるビバークをスタートし、その日の目的地となるビバークを目指します。その行程の中で、選手たちはリエゾン(移動区間)を走り、スペシャルステージ(競技区間)が行われるスタート地点まで一般道主体で移動をし、そこからスペシャルステージに挑みます。ラリーでは1日の行程をステージと呼んでいます。このステージの定義は、ビバークとビバークの間の行程を指します。
選手は目的地に向かってどのように走るのでしょうか?
主催者が制作した公式なロードブックを見ながら走行します。
2輪用のロードブックは、A5版サイズの幅を持つ巻物状のものに、スタート地点からの距離、方向転換点の情報など、必要な事柄が記されています。ロードブックに記載される情報はスタート地点からの距離のほか、目印となる分かれ道などを図式化もの、目標物(山、岩、家、電柱など)をイラスト化したもの、あるいは進行方向を示した方位を北が0°、東が90°、南が180°、西が270°のようにして0°~359°の間の数値でも示されています。
翌日のロードブックはスタート前日のビバークで受け取ります。自らナビゲーションしながら走るため、速く走るだけではなく、ロードブックを読み取る、解読する能力も問われます。
ステージのなかで選手たちがナビゲーションで注意することは?
迷わないよう確実にルートを見つけることです。
ミスコースは走行時間が余計にかかるばかりか、大きくミスコースすれば燃料が足りなくなる可能性もあります。トップクラスのライダーは、速いペースとミスのないナビゲーション能力が必須です。
また、ステージ中、選手たちは走行速度のマネージメントもしなければなりません。リエゾン区間では一般道の制限速度を守り走行することが求められます。また、スペシャルステージの中でも、人家のある村や危険な箇所を通る場合に、ロードブックに制限速度が指定されています。その場合も、速度制限を守ることがマストになります。ラリー中に、3つの異なるエリアで速度違反を犯すと、最大で失格を含む厳しいペナルティーが科せられます。
スタート方式はロードレースのようなものなのでしょうか?
ラリーでは時間差で1台ずつ、もしくは2台ずつスタートします。
初日のステージはゼッケン順に、2日目からは前日のステージの成績順にスタートします。そのスタートは、1位~10位までは3分間隔で1台ずつ、11位~20位までは2分間隔で1台ずつ、それ以降の順位は30秒間隔で1台ずつ、もしくは2台ずつとなります。
一斉にスタートするわけではないため、日程が進むほど見た目の順位と総合順位は異なってきます。ポイントとしては、総合順位でのタイム差をみながら日々のステージでの成績を見ることが必要になります。
また、ナビゲーションが重要になるラリーにおいては、砂丘地帯がメインの競技区間では、あえてライバルを先行させるために前日のステージでスピードを控え、翌日のステージで轍を追いかけながらペースを上げ、差を広げる、差を詰める、といった戦術がよく使われます。
カーナビのようなものを使うのでしょうか?
使いません。ロードブックを頼りに走行します。ただし、GPSは搭載しています。
選手たちのオートバイには、管理用のGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を使った通信システムが搭載されています。いわゆる「カーナビ」的に目的地へと誘導するものではなく、競技者の位置、速度、走行している、停止しているなどを本部が把握するためのものです。停止時間が長いと、本部から衛星回線をつかった電話で状況確認がされます。これはライダーが転倒などで停まっているのかをいち早く確認し、必要なアクションをおこすためのものです。
また、このGPSにより、速度ログ、走行軌跡ログも管理されています。指定されたコースを逸脱、故意にショートカットをした場合など、当然ペナルティーの対象となります。
チェックポイント(CP)、ウエイポイントとは?
ステージ中に、参加者がルート上を正しく通過しているかを管理するためのものです。チェックポイントやウエイポイントを正確にトレースしないと、タイムペナルティーが課せられます。
有人でオフィシャルが通過を確認するチェックポイントと、参加者には公開されていない緯度・経度の座標で定義された通過点のウエイポイントがあります。チェックポイントもウエイポイントの一つとして機能しています。
ウエイポイントには次のような種類があります。
ロードブックに記載される通過点。座標の記載はなく、ルート上に順番に現れるウエイポイント。通過を確認するためには、ライダーはその座標位置の200m以内を通過する必要があります。スペシャルステージのスタート地点はWPEとなります。また、スピードコントロールゾーンの開始地点と終了地点がWPEとなる場合、ライダーは座標点から半径90m以内を通過する必要があります。
隠されたウエイポイントです。スペシャルステージのフィニッシュ地点はWPMとなります。車両に搭載されるGPSのモニターは、WPMの800m以内に接近した場合、WPMの情報を表示し、通過を確認するためには座標点から200m以内を通過する必要があります。
鉄道、ガス、石油のパイプライン、道路の交差点など、危険箇所に設けられたウエイポイント。WPSの800m以内に接近するとGSPモニターにその情報を表示し、ライダーは座標点の90m以内を通過する必要があります。
視認できるウエイポイントです。ビバークのスタート、フィニッシュのチェックポイントなどを指します。
ビバークとは? 詳しく教えて下さい。
1つのステージがフィニッシュするチェックポイントと、次のスタートのタイムコントロールの間に位置するゾーンをビバークと呼びます。
ビバークは、いわゆるラリーのキャンプ地でもあり、翌日に備え、整備や食事、ブリーフィングなどを行うラリー中の生活の場でもあります。それだけにルールも厳しく、ビバーク内での制限速度は時速20kmで、危険な運転はもちろん禁止されるほか、参加者が食事を採るケータリングエリア内にバイク、クワッドで乗り付けることも禁止されています。
マラソンステージとは。
サービス車両やチームのサービスクルーが介在しない、2日間の連続したステージをマラソンステージと呼びます。
マラソンステージをスタートすると、翌日ビバークに戻るまでライダー自らがマシンのメンテナンスを行い、チームで助け合うなどして走破します。マラソンステージのビバークでも同様で、外部からのサポートは受けられず、ライダー、マシンが所定の場所から出ることを禁止されています。マラソンステージの起源は、過去のダカールラリーで行われていた1日1,000kmを越えるようなスペシャルステージを再現したもので、長いルートで起こる冒険ラリーらしいドラマを2日に分けることで今に伝えています。