DAKAR 2017への道 - PART 1
ダカールラリー2017への準備と体制、戦略を聞く
PART 2

2017年1月1日(日)。世界一過酷なラリーとして知られるダカールは、スタートのときを迎える。南米パラグアイの首都、アスンシオンで行われるセレモニアルスタートに向け、すでに秒読みが始まった。パラグアイ、アルゼンチン、ボリビアと3カ国にまたがるダカールラリー2017は、全12ステージ、総走行距離は8818km。そのうち、タイムを計測するスペシャルステージ(競技区間)の距離は4000kmを超える。

ダカールラリーが南米に舞台を移して、今回が9年目。しゃく熱の砂丘、ときに標高5000mまで上がるルート、そして予期せぬ天候が真夏のラリーの行方をさらに難しくする。しかしこれらはダカールラリーの過酷さを装飾するものでしかない。17年の特徴は、今まで以上にボリビア国内でのステージが増え、“高地決戦の年”とささやかれている。

Hondaがダカールラリーに復帰して5年目。南米の大地を走るMonster Energy Honda TeamのファクトリーマシンであるCRF450 RALLYや、サポートメンバーを乗せるアシスタンスカーなどは、11月下旬、フランスの港町であるル・アーヴルから、海路でラリーの舞台となる南米大陸へと向かった。

間近に迫ったダカールラリーに向けて、開発の仕上げを進めたエンジニアに、チーム体制、戦略、そしてワークスマシンCRF450 RALLYの進化について聞いた。


佐々木 崇

語り手
佐々木 崇

Monster Energy Honda Team(モンスター・エナジー・ホンダ・チーム)
ラリープロジェクトLPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)代行
CRF450 RALLY 車体設計PL(プロジェクト・リーダー)


ダカールラリー2017に向けたチーム体制について教えてください。

佐々木
佐々木
16年のラリーを終えた段階から、17年に向けた体制作りに取り組みました。その特徴は、これまで外部に委託していたチーム体制を、HRC直属のチームへと変更し、チーム運営、メカニックの動き、ラリーに向けたロジスティクスなど、さらにフットワークがよくなるよう熟成させました。テストも開発側とライダーが直接行うことで、今まで以上にコミュニケーションが密になっています。

ここまでの成果は?

佐々木
佐々木
チームの結束力がさらに増しました。チーム全体でマシンの改善や戦略の熟考などに取り組むホールチームという雰囲気です。アルゼンチンでのルタ40、中国でのチャイナ・グランド・ラリー、北サハラで行われたモロッコラリーなど、テストを兼ねて実戦参戦したラリーでも、その成果を感じられました。また、ラリーへの参戦後に事後テストを行うことで、ライダーの気持ちや思いが熱いうちに、マシンの印象を聞くことができたことも収穫でした。ラリーの前には出ていなかった改善点がライダーから出されることもあり、開発のテンポが上がりました。なにより、問題点を同じ場所と路面で、設計側とライダー側が共有できたことも大きなメリットでした。

体制を変えたことでライダーたちに変化はありますか?

佐々木
佐々木
例えばテストのときに、ライダー同士で「こんな路面はどうやって走っている?」というような疑問や、セッティング面での個々のやり方など、チームメート同士でマシンを乗り換え、セッティングの方向性や乗り方に関するテスト中の疑問を共有し、アドバイスをし合いながら改善をしています。こうしたチーム内の密度がより濃くなったのが特徴です。開発側とライダーが、ラリーを走った現場に近い環境でさまざまなことを行えたので、的確な改善案を引き出せる、症状の状況を説明できるなど、信頼関係の醸成に大きくつながっています。

ライダーのラインアップを教えてください。

佐々木
佐々木
今回、5名のライダーとともに戦います。

ホアン・バレダ選手 #11
ダカールを走るライダーの中でも、スピードを最も有するライダーだと思います。トレーニングを積み、スピードとともに高いナビゲーションスキルを獲得しました。我々のラインアップでは、優勝に最も近い位置にいるライダーです。

パウロ・ゴンサルヴェス選手 #17
バレダ選手同様、スピードを有するライダーです。ラリーでは前半を抑え、後半に伸びる戦術を得意としています。

ケビン・ベナバイズ選手 #4
16年はHonda South America Rally TeamからCRF450 RALLYを走らせた選手で、17年はMonster Energy Honda Teamからエントリーです。昨年は総合4位。開催地である南米出身のライダーで、強いメンタルを持っているのが特徴です。スペシャルステージで1位になった翌日、1番手からスタートしてライバルからの追い上げにあっても、意に介さず強い走りができるのが持ち味です。
※練習中のアクシデントによる負傷のため、ケビン・ベナバイズ選手は、ダカールラリー本戦を欠場することになりました

リッキー・ブラベック選手 #9
アメリカ人の彼は、Monster Energy Honda Teamのライダーの中では最年少の25歳です。10月に参戦したモロッコラリーで実力をみせるなど、期待のライダーです。

マイケル・メッジ選手 #15
メッジ選手はとても繊細で的確なセンサーを持ったライダーです。17年に向けたマシン作りでも才能を発揮してくれました。バレダ選手のサポートライダーとして走り、彼がトラブルに見舞われた際、クイックサポートをするのがミッションです。

今回のダカールラリーにおける戦略を教えてください。

佐々木
佐々木
チーム力です。かつてNXR750で4連覇を成し遂げた先達から「ラリーは順調なときもあれば運が落ちるときもある。運が落ちたとき、どれだけ耐えられるか。それが勝つために必要な力だ」と、お言葉をいただきました。この5年、南米で戦いながらその言葉の意味が分かるようになりました。ラリーでは必ずなにかが起こります。そのときに浮き足立つことなく落ち着いて対処し、あきらめず粘り続ける。マシン作りの方向性、チーム体制もそんな戦い方ができるよう、熟成して5年目に挑みます。どうぞ応援をよろしくお願いします。

DAKAR 2017への道 - PART 2 : 2017年仕様のCRF450 RALLYの進化について