2018年からMotoGPクラスに参戦する中上貴晶は、 IDEMITSU Honda Team Asiaのエースとして活躍し、2017年のイギリスGPでGP通算2勝目を挙げた

― イデミツ・アジア・タレント・カップをはじめとしたアジアから世界へつながるレース情報ページ ―

2014年にスタートしたアジア・タレント・カップは
アジアから世界へとつながる道を明確に示したレースシリーズだ
ここではアジア・タレント・カップを起点に
さらにその先にあるレースシリーズとそこで活躍する
日本人、アジア人ライダーたちを紹介しよう

アジア・タレント・カップはHondaとDornaの協力によるアジア人ライダーの育成レースであるが、HondaとDornaはそれ以前から、さまざまな形でライダーサポート、レースサポートを継続的に行なってきた。ライダーの世代によって、その形態やルートは異なるものの、一貫して目指す目標は世界にある。

2017年からMotoGPクラスにステップアップする中上貴晶は、Dornaが展開するMotoGPアカデミーに2006年に抜てきされて、世界グランプリへの一歩を踏み出した。

そのあと、Dornaは2007年よりMotoGPルーキーズカップをスタート。MotoGPアカデミーやルーキーズカップからは多くのGPライダーが誕生し、現在も第一線で活躍しているが、あくまでもその中心はヨーロッパ人ライダーの育成にあった。

そんな中、アジア地域のロードレース人気を後押しするかのように、2012年にHondaはアジア選手権の中にアジア・ドリーム・カップ(ADC)を創設する。ADCは量産スポーツバイク、CBR250Rをベースとしたプロダクションレーサーのワンメイクレースだ。イコールコンディションを徹底することで、常に競り合いのあるレースが展開され、多くのアジア人ライダーを育てた。

ADCでは初代チャンピオンに大久保光、2代目チャンピオンに尾野弘樹と、レース経験豊富な日本人ライダーがタイトルを獲得した。こうした日本人ライダーの存在がアジア人ライダー全体のレベルアップをけん引する力となり、3年目にはマレーシア人のカイルール・イダム・パウィがタイトルを獲得した。

尾野はADCを卒業したあとはCEVレプソルインターナショナル選手権手権(CEV)のMoto3クラスを戦い、2015年には世界GPのMoto3クラスに到達。大久保は全日本選手権を経て、スーパースポーツ世界選手権で活躍している。そしてパウィは、2015年のMoto3ジュニア世界選手権を経て、2016年には世界GPのMoto3クラスにデビュー。1年目に2勝をマークし、2017年からMoto2クラスにステップアップを果たした。

ADCは2016年でシリーズの使命をまっとうしたが、2014年にはDornaとHondaの協力により、アジア・タレント・カップが創設され、その流れを引き継いでいる。

アジア・タレント・カップはレース専用マシン、NSF250Rを使ったワンメイクレースで、より明確に世界GPのMoto3クラスへの参戦を意識したシリーズ。マシン差のない接戦はADCと変わらず、スリックタイヤを履くレース専用マシンならではの、よりシビアなレース経験を積むことができる環境が整ったシリーズでもある。

また、ADCが東南アジアのライダーを中心としたシリーズだったのに対し、アジア・タレント・カップは中東やトルコまでその対象が広がっているのも特徴の一つでもある。シリーズ開始初期は、ここでもレース専用マシン経験のある日本人ライダーがシリーズ全体を引っ張り、2014年チャンピオンを鳥羽海渡、2015年チャンピオンを佐々木歩夢が獲得した。

鳥羽と佐々木はその後、Moto3ジュニア世界選手権とルーキーズカップに参戦。Moto3ジュニア世界選手権では、アジア・タレント・カップ出身ライダーのために、2015年にアジア・タレント・チームが結成された。そして、鳥羽と佐々木は2つのシリーズで結果を残し、2017年から世界GPのMoto3クラスへのフル参戦を実現している。

現在はアジア・タレント・カップ出身の第2世代、第3世代のライダーたちが、Moto3ジュニア世界選手権で活躍中。さらにルーキーズカップでは2016年に佐々木が、2017年に真崎一輝がチャンピオンを獲得しており、アジア・タレント・カップ出身者のレベルの高さを証明している。

現在、世界GPのMoto3クラス、Moto3ジュニア世界選手権は、ともにファクトリーレベルのマシンでなければ勝負にならないレースとなっている。レースコストもそれに応じて上がっており、プライベートチームで参戦するハードルはとても高い。

そんな中、アジア・タレント・カップができたことで、アジア人ライダーは結果を残せば、大きな資金負担なく、次のステップを戦うチャンスがある。もちろん、そのためには、まずアジア・タレント・カップで結果を残すことが求められ、さらにその先でも結果を残すことが重要視されている。

世界グランプリMoto2クラス 世界グランプリMoto2クラス

世界GPのMoto2クラスでは、ライダーの世代によりルートが異なる。ADC出身のパウィは2014年にADCのチャンピオンとなり、Moto3ジュニアを経て、2016年に世界GPのMoto3クラスに参戦、2017年にMoto2にステップアップした。長島は2014年に一度Moto2にフル参戦。その後、Moto2ヨーロッパ選手権を経て、2017年からMoto2に復帰。中上はDornaがサポートするMotoGPアカデミーでスペイン選手権で経験を積み、世界GP125ccクラスに参戦。一度、全日本に戻ったが、Moto2クラスのチャンスをつかんだ。

IDEMITSU Honda Team Asiaのエース、中上貴晶。昨年のイギリスGPでGP通算2勝目を記録、今年からMotoGPクラスに参戦

IDEMITSU Honda Team Asiaのエース、中上貴晶。昨年のイギリスGPでGP通算2勝目を記録、今年からMotoGPクラスに参戦

  • IDEMITSU Honda Team Asiaのエース、中上貴晶。昨年のイギリスGPでGP通算2勝目を記録、今年からMotoGPクラスに参戦

    IDEMITSU Honda Team Asiaのエース、中上貴晶。昨年のイギリスGPでGP通算2勝目を記録、今年からMotoGPクラスに参戦

  • 2014年のADCチャンピオンのカイルール・イダム・パウィ。Moto3ジュニア世界選手権を経て、昨年Moto2デビュー。2勝を記録した

    2014年のADCチャンピオンのカイルール・イダム・パウィ。Moto3ジュニア世界選手権を経て、昨年Moto2デビュー。2勝を記録した

  • 全日本J-GP3、J-GP2クラスを経てMoto2フル参戦。Moto2ヨーロッパ選手権を経て、2017年シーズンから世界GPのMoto2に復帰した長島哲太

    全日本J-GP3、J-GP2クラスを経てMoto2フル参戦。Moto2ヨーロッパ選手権を経て、2017年シーズンから世界GPのMoto2に復帰した長島哲太

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世界グランプリMoto3クラス 世界グランプリMoto3クラス

世界グランプリのMoto3クラス。ホンダサポートのアジア、日本人ライダーは5名がNSF250RWで参戦。そのうちの4名がアジア・タレント・カップ出身ライダーで、鈴木竜生は独自にCEVのMoto3クラスから世界グランプリMoto3クラスへのチャンスをつかんだ。アジア・タレント・カップの4名のうち、鳥羽と佐々木はアジア・タレント・カップのチャンピオン経験者。アティラプワパはADCとATCの2つの育成レースを経験している。

2014、2015年にATCに参戦、2016年よりMoto3クラスに参戦するマレーシア人のアダム・ノロディン

2014、2015年にATCに参戦、2016年よりMoto3クラスに参戦するマレーシア人のアダム・ノロディン

  • 2014、2015年にATCに参戦、2016年よりMoto3クラスに参戦するマレーシア人のアダム・ノロディン

    2014、2015年にATCに参戦、2016年よりMoto3クラスに参戦するマレーシア人のアダム・ノロディン

  • 2014年ATCチャンピオン。Moto3ジュニア世界選手権を経て、昨年からからMoto3にフル参戦した鳥羽海渡

    2014年ATCチャンピオン。Moto3ジュニア世界選手権を経て、昨年からからMoto3にフル参戦した鳥羽海渡

  • CEVのMoto3クラスを経て、自ら世界GPのMoto3のシートをつかんだ鈴木竜生。昨年からHondaのマシンを駆り参戦中

    CEVのMoto3クラスを経て、自ら世界GPのMoto3のシートをつかんだ鈴木竜生。昨年からHondaのマシンを駆り参戦中

  • 2015年のATCチャンピオン、佐々木歩夢。2016年にルーキーズカップでタイトルを獲得。2017年からMoto3に参戦

    2015年のATCチャンピオン、佐々木歩夢。2016年にルーキーズカップでタイトルを獲得。2017年からMoto3に参戦

  • ADC、ATC、Moto3ジュニアを経て、2017年からMoto3に参戦するタイ人のナカリン・アティラプワパ

    ADC、ATC、Moto3ジュニアを経て、2017年からMoto3に参戦するタイ人のナカリン・アティラプワパ

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スーパースポーツ世界選手権 スーパースポーツ世界選手権

4ストローク600ccプロダクションレーサーの最高峰が、スーパースポーツ世界選手権(WSS)。大久保光は2016年から参戦しており、今年は2シーズン目となる。大久保は2010年に全日本J-GP3クラスでチャンピオンを獲得。2014年に始まったCBR250Rのワンメイクレース、ADC(アジア・ドリーム・カップ)に参戦すると初代チャンピオンを獲得。その後、全日本J-GP3クラス、ST600クラスを経て、WSSで世界に挑んでいる。

2012年ADCチャンピオンの大久保光。2016年よりスーパースポーツ世界選手権にフル参戦している

2012年ADCチャンピオンの大久保光。2016年よりスーパースポーツ世界選手権にフル参戦している

Moto3ジュニア世界選手権 Moto3ジュニア世界選手権

イデミツ・アジア・タレント・カップライダーの次のステップが、Moto3ジュニア世界選手権。スペインを中心にフランス、ポルトガルと8コース全12レースで争われるシリーズで、世界グランプリMoto3クラスへの登竜門と位置づけられている。HondaとDornaのサポートでアジア・タレント・チームが結成され、マシンはNSF250RWを使用。また、DornaのサポートによるMotoGPルーキーズカップにも参戦するライダーもおり、ルーキーズカップでは2016年に佐々木歩夢が、2017年には真崎一輝がチャンピオンを獲得。小椋藍も2勝を記録し、ランキング5位につけた。

FIM CEV Repsol

2016年よりATC参戦。2017年シーズンは2年目のATCとMoto3ジュニアに参戦した國井勇輝

2016年よりATC参戦。2017年シーズンは2年目のATCとMoto3ジュニアに参戦した國井勇輝

  • 2016年よりATC参戦。2017年シーズンは2年目のATCとMoto3ジュニアに参戦した國井勇輝

    2016年よりATC参戦。2017年シーズンは2年目のATCとMoto3ジュニアに参戦した國井勇輝

  • 2015、2016年とATCで活躍した真崎一輝。2017年はルーキーズカップチャンピオンも獲得した

    2015、2016年とATCで活躍した真崎一輝。2017年はルーキーズカップチャンピオンも獲得した

  • 2015年、2016年とATCを戦い、2017年はケガの欠場はあったが、Moto3ジュニアで1勝を記録した小椋藍

    2015年、2016年とATCを戦い、2017年はケガの欠場はあったが、Moto3ジュニアで1勝を記録した小椋藍

  • 2016年のATCチャンピオンのタイ人、ソムキャット・チャントラ。Moto3ジュニアは2017年から参戦

    2016年のATCチャンピオンのタイ人、ソムキャット・チャントラ。Moto3ジュニアは2017年から参戦

  • 2014年にADC、2015年にATC参戦した経験を持つインドネジア人のアンディ・イズディハール

    2014年にADC、2015年にATC参戦した経験を持つインドネジア人のアンディ・イズディハール

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Moto2ヨーロッパ選手権 Moto2ヨーロッパ選手権

FIM CEVレプソル選手権で開催されるMoto2クラス。世界グランプリのMoto2クラス参戦を目指すライダーが集うクラスで、世界グランプリのMoto3、Moto2経験者も多い。マシンは基本的に世界グランプリと同スペックで、タイヤもダンロップのワンメイク。現役Moto2ライダーの長島哲太は昨年、このカテゴリーでランキング2位を獲得し、Moto2参戦のチャンスをつかんだ。2017年シーズンには、Moto3経験者の尾野弘樹が参戦している。

2013年ADCチャンピオンの尾野弘樹。2015、2016年とMoto3フル参戦。今年はMoto2ヨーロッパ選手権参戦

2013年ADCチャンピオンの尾野弘樹。2015、2016年とMoto3フル参戦。2017年はMoto2ヨーロッパ選手権参戦

アジアロードレース選手権 アジアロードレース選手権

アジア地域を転戦するロードレースシリーズ。アジア地域のロードレース人気の高まりと日本人ライダーの参戦により、ここ数年、急速にレベルアップ。インドネシアのアストラ・ホンダ、マレーシアのブンシュウ・ホンダ、タイのエーピー・ホンダなど、ホンダの各現地チームが力を注いでおり、SS600クラス、AP250クラスともに激しい戦いが繰り広げられている。

ADC、ATC参戦経験を持つインドネシア人のゲリー・サリム。2017年はCBR250RRでAP250を駆り、圧倒的な強さを発揮

ADC、ATC参戦経験を持つインドネシア人のゲリー・サリム。2017年はCBR250RRでAP250を駆り、圧倒的な強さを発揮

アジア選手権でロードレース活動を始めた羽田大河。SS600で3年目の今年、優勝を飾った

アジア選手権でロードレース活動を始めた羽田大河。SS600で3年目の2017年シーズンは、優勝を飾った

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イデミツ・アジア・タレント・カップ イデミツ・アジア・タレント・カップ

2014年にDornaの主導で始まったアジア・タレント・カップ。現在はイデミツ・アジア・タレント・カップとして開催されており、ホンダNSF250Rのワンメイクレースとして、アジア人ライダーの育成レースとして位置づけられている。セレクションで選ばれたライダーのみが参戦でき、マシンや装具、タイヤ(ダンロップのワンメイク)は提供される。優秀な成績を収めた者には次のステップが用意されている。

現在の登竜門であるイデミツ・アジア・タレント・カップ。2017年シーズンは、アジア圏7カ国22名のライダーが競い合った

現在の登竜門であるイデミツ・アジア・タレント・カップ。2017年シーズンは、アジア圏7カ国22名のライダーが競い合った

HRC NSF250R Challenge CBR250R/CBR250RR Dream CupHRC NSF250R Challenge CBR250R/CBR250RR Dream Cup

日本国内で開催されているワンメイクレース。HRC NSF250Rチャレンジは各地方選手権のJ-GP3クラス内での成績で争うクラスで、マシンはNSF250Rのスタンダード。成績優秀者にはATCへの出場権が与えられる。CBR250R/CBR250RRドリームカップは、CBR250R/CBR250RRのワンメイクで、ビギナー、エキスパートのクラス分けがあり、各地域の各クラスランキング上位者が一同に集う全国大会も開催される。