長円形ピストン・エンジン / 1979

夢を求め、最高の技術を追求したエンジニアたちの挑戦

長円形ピストン・エンジン / 1979

復帰するなら当然、4サイクルで

1979年、Hondaは世界グランプリの最高峰である500ccクラスへ、12年ぶりの復帰を果たした。マシンは4サイクルV型4気筒のDOHCエンジンを搭載したNR500。一気筒当たり8バルブと2本のコンロッドを持つ長円形ピストンエンジン、アルミセミモノコックフレームに倒立フロントフォークなど、だれもが驚くほど独創的・革新的な技術が凝縮されたマシンであった。

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チャレンジングスピリットが生み出した長円形ピストンエンジン。1979年の0Xエンジン

「今から思えば、すごく進化していたのか、それともばかなことをやっていたのか、よく分からないけれど、少なくとも、世間では想像できないようなことをやってましたね。エンジンも車体も、お互いにね」。
このNR500に搭載された長円形ピストンエンジンを開発したエンジニアの1人、吉村年光は当時をそう振り返る。

「差ではなく、違いなんだと思ってましたから。だから、Hondaはやはり4サイクルであると。革新的な技術、違いを持った技術で、目標を達成したかったんです」。
この時代、ロードレースの世界では既に2サイクルエンジンが全盛を極めていた。それにもかかわらず、Hondaは、あえて4サイクルエンジンを搭載したNR500での挑戦を選択した。しかし、あえてというより、それはむしろ当然のことであった。

これ以前、あのマン島TTレースに始まる第1世代のレース活動の中で、Hondaの4サイクルエンジンは、最高の実績を挙げて評価を受け、お家芸とまで言われてきたのである。たとえ2サイクルエンジンの方が出力を稼ぐためには有利であっても、それを上回る4サイクルエンジンをつくればいいだけのことである。その点で、Hondaに常識は通用しない。TTレースへの挑戦そのものが、常識を超えていたのだから。

加えて、世界GP復帰を決定したトップたちをはじめ開発スタッフの多くは、本田宗一郎の薫陶を受けている。2サイクルは"竹筒(たけづ)っぽ"だという言葉が、身に染み付いていた。だから、4サイクルのHondaとして復帰することに、疑問の余地はなかったのである。

実際にエンジンを設計した吉村も、初めから、4サイクルエンジンでと決めてかかっていた1人であった。
「4サイクルは、メカニズムとしてのけじめがいい。バルブがきちっと閉まって、燃焼させて、排気が開いて吐き出すというキレがある。攻めどころがビシッと決まるところが、技術屋としては1番面白い。そして技術の進化とは、そうあるべきだと思います」。

レースをするからには、勝たなければ意味がない。しかし、それは自分たちが信じる道を貫いてこそ言えることだ。たとえそれが険しい道であっても、可能性のある限り追求してこそ価値がある。挑戦することの厳しさを、そしてそれを乗り越えた時の喜びを知り尽くしたHondaだからこそ、4サイクルエンジンでの復帰が計画されたのである。

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